【はじめに】
福島青年会議所が発足して59年、諸先輩方は地域の発展に寄与すべく様々な運動を連綿と紡いでこられました。その歴史の中には国内外を問わずその時代それぞれの良い事も悪い事も編み込まれており、まさしく「禍福(かふく)は糾(あざな)える縄の如し」と言えます。これは「良い事と悪い事は、まるで縒り合わされた縄のように絡み合う表裏一体のものである」という意味の言葉です。気候変動、巨大災害、感染症、国際情勢。今を生きる人類はかくも多くの難題を抱えつつも、驚異的な速度で適応しています。外的要因の変動により変化が生じ、生き残りを懸けた選択を経て進化が起こる。私たちは今まさにその進化に直面しています。そんな時代の真っ只中にあり、青年会議所として地域社会に資する事は何か、青年経済人として目指す姿とは何か、為すべき事は何かを明確にして、全会員が一丸となって運動を展開しなくてはなりません。
【地域社会と、未来を担う子供たちのために】
私たちの住む愛するふるさと、福島市そして川俣町。農業・商業・観光業に関連する社会的な資源が豊富な素晴らしいまちです。人口の減少が続き活気が伸び悩むという問題はありますが、私はこのまちが有するポテンシャルの高さを信じています。ここ数年の人流抑制でまちに住む人々の活動意欲は低下気味ですが、私たちはここで事業への巻き込みを諦めてはなりません。私たちのように、まちの活性化に向けた意欲を高めてゆきたいという市民が必ずいるはずです。私たちは知識と知恵を総動員して粘り強く事業を継続し、28万人の住まうこのまちの長所を伸ばし、市民を巻き込んで魅力を発信してゆく必要があります。
また、地域の発展と密接に繋がっているのは、何を隠そう青少年の育成です。次世代そのものである子どもたちを健全に育て、郷土愛をはぐくまなければ、地域の発展は成しえません。2022年現在の福島市の20歳未満の人口は約4万2千人で、人口の減少に伴い毎年その数は減っています。この現状は急激にⅤ字回復とはいかない難題ですが、そうであるからこそ私たちは時間をかけて粘り強く改善策を模索し、今この地域で育っている子どもたちに真摯に向き合い、成長に繋がる様々な経験を提供できる事業を行う必要があります。
【伝統文化の継承のために】
福島県には様々な魅力ある伝統文化がありますが、その中で県を代表するまつりという地位を確立しつつあるのが、我々も密接に関わっている福島わらじまつりです。地域の伝統文化とともに歩んできたこのまつりは、直近2年間の縮小開催によってその継承に大きな打撃を受けましたが、2022年度に関係する各所の念願が叶い、ついに実地開催へ漕ぎつける事ができました。この勢いに乗りまつりとしての盛り上りを取り戻すためには本年も多大なエネルギーがかかりますが、「市民が守り受け継いできたまつりの灯は、何があっても絶やさない」という思いを強く持ち、今だからできる事業を積極的に行います。また、前述の地域の伝統文化について、私たち福島青年会議所はその活性化に貢献する事業を脈々と行ってまいりました。「屈するは伸びんがため」という故事に倣い、飛躍の年となる今こそ、まちに根付く伝統文化を盛り上げる事業を行います。
【新入会員の獲得と、適正な組織運営のために】
会の存続と活動の継続のためには、持続的な会員拡大運動が必要不可欠です。青年会議所の長所である「修練・奉仕・友情」の三信条の実践と、それを通して自然に行わる道徳心の涵養は、他のどの組織にもない私たち独自の誇るべき慣習です。私が入会した当初、先輩から「恩送り」という言葉をいただき、当時は稀な事もあるものだと思っていました。しかし今になってみれば、ごく自然に同じ気持ちが湧き上がっています。この「恩送り」のリレーを未来へ続けてゆきたい。そして、組織に蓄えた知恵とスキルを繋いでゆきたい。その希望の実現のため、私たちと志を同じくする青年を獲得する必要があります。
また、厳格な会議体を運営している青年会議所は、所属する青年に多くの気づきを与えてくれます。時代に合わせて変化をしていく事も必要ですが、変わらない価値観を引き継いでゆく事も大切な要素として、組織運営を行います。会議運営の本質や事業実施についての知識を広く会員に伝え、各事業所において活用できるよう実行してゆきます。
【組織を続けてこられた感謝を伝えるために】
私たちは今こうして青年会議所につどい、運動を続けられています。これは決して当たり前の事ではなく、私たちに関わる全ての方が応援してくださっているからこそ成しえている事であります。周年の節目となる本年は、私たちを送り出していただいている皆様に感謝を伝えられる絶好の機会となります。今日まで私たちが行ってきた活動を伝え、そしてこれからも地域の発展に寄与する組織である事を示せる記念事業を開催します。また、60年の長きに渡り連綿と紡がれてきた伝統に則り、その知識と経験を活かした記念式典を執り行い、関係各所との連携の礎を強固にします。そして、今後益々活発に続いてゆく福島青年会議所の次なる時代の仲間へと繋がる記念誌を作成し、本会に携わっていただいた皆様と共有してまいります。2023年度は60年目の節目の年ですが、私たち青年会議所に老化という言葉はありません。常に新しくあり続ける姿を内外に示し、私たち自身の家族から諸先輩方、地域の皆様まで、関わる全ての方々へ謝意を伝えてゆきます。
【結びに】
現在の社会情勢は、前述の通り「禍福(かふく)は縒(よ)り合わさった縄のよう」であり、大切な「福」が見えにくい面が表立っています。しかし、「福」を目指して縒り続ける私たちの運動は必ず結実し、明るい豊かな未来へ向かいます。創立60周年という十年に一度の挑戦の機会に恵まれた本年に巡り合えた事を喜び、若く力強い青年経済人が集結したこの福島青年会議所で、全員が成長と進化を実感する一年間を展開して、ふくしまの発展と、明るい豊かな社会の実現に寄与してまいります。