【はじめに】
時代は新型コロナウイルスによる急激な行動変容のもと、パラダイムシフトが起き、人それぞれの価値観も大きく様変わりしました。また、福島においては震災後に地方創生が叫ばれ、原発事故からの復興も相まって、ひと時の経済的な豊かさは享受したものの、新型コロナウイルスの感染拡大長期化や、予てからの福島が抱えていた問題の未解決により、停滞感、閉塞感は拭えず、市民の一体感も喪失されています。さらに、毎年、各地で発生する自然災害は今や偶発的ではなく、必然性を帯び始め、日々の暮らしの脅威となっております。そして、それらの問題を課題として捕捉し、持続的な解決に導くはずの我々、福島青年会議所は、上記した価値観の変化や経済的状況などで10年前から比較して2/3に会員数を減らしています。
しかしながら、全体で捉えず、会員一人ひとりを見て取ると、若き起業家や女性会員数の増加があり、入会年数が浅い会員の理事における奮闘などで活発な議論が生まれているのも事実であり、多様性が求められるこの時代に明るい兆しであることは間違いありません。また、青年としての英知と勇気と情熱を持ち、変化が求められる時代だからこそ、本質の議論と柔軟な対応で、事業を発展昇華させた2020、2021年度がありました。さらに社会福祉協議会との災害時支援相互協力協定を締結したことにより、災害時の対応は当事者意識に溢れ、効果的な対応が迅速に実施され、確実に地域に貢献していることも実感しています。
青年会議所には「新日本の再建は我々青年の仕事である」という志のもと、意識や行動を醸成する素晴らしい文化やプログラムが多数存在します。戦後と同等の危機と言っても過言ではないこの時代に、我々は青年会議所の持つポテンシャルを信じ、そして、圧倒的な危機感を持ち当事者意識に溢れ、持続的に発展する「福島」を実現する運動を能動的に展開しなくてはなりません。
【福島の市民を一つにする「まつり」】
東日本大震災後の復興を契機に盛り上がりを見せ始めていた「福島わらじまつり」。市民の能動的な参加による「市民の、市民による、市民のためのまつり」を目的にリニューアルされた第50回、そして、さらに発展するはずだった第51回、しかし、そこに新型コロナウイルスが暗い影を落としました。未知の感染症対策により、「まつり」の醍醐味が発揮される密集密接はタブーとなり、そこから生まれるはずだった熱量が奪われた結果、開催に対する疑念や「まつり」自体に対する意義などが噴出し、地域や市民を繋ぐはずの「まつり」で、逆に分断の危機が生じているように感じます。
多様な価値観が存在する時代で一方的な判断は勿論ありえませんが、「まつり」という伝統文化などは常に続けるべきか、続けないかを議論して判断していかなければ、その伝統文化自体が形骸化していき、その地域の活力も奪われます。
私は市民を一つにする力が「まつり」にはあると信じています。そのために我々は市民が一つになる「福島わらじまつり」を、まずは我々が主体的になって牽引して参ります。また、形骸化せず、持続性ある伝統文化にしていくために、市民に向けて参加型の意識醸成事業も実施して参ります。
【福島の発展を持続可能にする「まちづくり」】
私は福島に生まれ育っていません。その私が感じる福島は三島由紀夫が未来の日本を憂いて残した「無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、・・・」そんな街になってはいないでしょうか。現実、「いい部屋ネット住みたい街ランキング2021自治体ランキング<東北版>」にて東北全体で郡山市が3位に対して、福島市は9位となっており、県庁所在地の中で最下位です。
街は人が住み、仕事や消費行動をする事で、経済が回り、活性化し、街として存続していきます。それには、その街に住む市民が地域に魅力を感じて、地域に根付いてもらわなければ持続性はありません。また、一度、福島を離れた市民も、故郷を想い、「福島に戻りたい」と思わせることも重要です。
そのために我々は人財も含めた地域の魅力を認識し、磨き、発信する事業を展開します。また、前述した自然災害は、我々の想いをこめた「まちづくり」をハード、ソフト両面で破壊してしまいます。しかし、自然に抗うことは出来ません。我々はこの問題に向き合い、市民と共有、共感、共鳴することでネットワークを築き、有事の際は、迅速で有機的な対応に注力し、まさに強靭的な復旧、復興を目指すことが必要と考えます。そのためには、我々、福島青年会議所が災害時支援相互協力協定に基づく、社会福祉協議会との連携を深めると同時に、強靭且つ、持続的なまちづくりには市民の能動的な災害対応が、必要不可欠であるという意識醸成の場を創出します。
【福島を先導する「組織」】
2020年から続く新型コロナウイルス拡大で、青年会議所、そして会員は様々な成長の場を約2年間分失いました。成長とは自分が出来なかったことが、出来るようになることだと考えます。しかし、それだけでは本当の成長とは言えません。その成長で得た経験を基に次世代へ紡いでいく事が「真の成長」と考えます。地域の持続可能な発展に人財は必要不可欠です。地域を担うであろう人財の育成には、情熱を持って、より体系的に物事の本質を教える必要があると考えます。
そのためには自分たちがまずは学び、成長することが必要です。我々は会員全員に平等に与えられている例会で、自分の成長のプロセスを明確にし、会員一人ひとりがインスパイアする機会の提供を実施します。また、我々会員が例会や青年会議所活動で成長し、事業を通じて地域に効果をもたらしても、広報が少なければ、その効果は限定的で自己満足に過ぎません。さらに、ストーリー性を持って我々の運動を発信することで、組織としての価値も高まり、会員の意識向上にも繋がります。そのためにはコンプライアンスに則り、迅速で効果的な広報活動を展開して参ります。さらに、成長するためには、成長する「場」「機会」が必要です。例会も含め、様々な式典、会議などを参加する側、設営する側、双方で学びの多い、そして、開催の趣旨が伝わる設営をして参ります。
【福島に共鳴をもたらす「会員拡大」】
私が入会した2012年は会員数が85名も在籍し、2022年度は60名を切ってのスタートです。現在、日本中の青年会議所が会員数減少という問題に直面しています。これは単なる少子化や生産労働人口の流出などが要因ではないことが推察されます。「青年会議所しかなかった」時代から、一般的に社会課題を解決するカリキュラムとしてSDGsが普及している現代、また、量的価値から質的価値の時代に、我々青年会議所の存在意義が試されています。
しかし、青年会議所は素晴らしい組織です。青年会議所には多様な人間が集まるからこそ、多様な議論が展開し、多様な価値観感が組織に包摂されることで、目まぐるしく変化し、不確実性の現代において必ずや指針となってくれる環境があります。また、青年会議所には成長の機会やプログラムが先進的に存在し、生涯学習の学び舎ともなっています。これらは個人のコミュニティ、社業に必ず役に立ち、その成長、繁栄は地域の健全な発展に繋がっていきます。
だからこそ、最大限にこの効果を活かし、好循環をもたらす為には「数」が必要なのです。我々は巻き込む力が、福島の礎を築くと信じて、圧倒的な活動量と巻き込む仕組みが両輪となった会員拡大運動を展開して参ります。
【結びに】
「不安」は自分自身の内面で作り出している物語で、行動の原動力には成りえません。
「恐怖」は目の前に迫った現実で、危機感を感じ、必ずや行動に移す要因になります。決して「恐怖」や「危機感」をマイナス的思考で捉えるのではなく、そこから生み出される、圧倒的な主体性、当事者意識をポジティブに捉える事で、一人ひとりの今が変わってくるのだと思います。そのより良い変化が、健全な地域社会の発展、そして平和で繁栄する日本国家と世界の実現に必ずや結び付くと信じて、私の所信とさせていただきます。
思考に気をつけなさい。それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい。それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい。それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい。それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい。それはいつか運命になるから。
マザーテレサ